「3回塗り(下塗り・中塗り・上塗り)」ってなぜ必要なの?回数を減らされるとどうなる?

塗装工事の見積書を読み込む男性(イメージ)
公開日: 更新日: お客様相談室
熊本市 築12年 40代男性
熊本市 築12年 40代男性
見積書に「3回塗り」と書いてあるのですが、なぜ3回も必要なのか分かりません。回数を減らせば安くなるのでは、とも思う一方で、手を抜かれても自分では見抜けない気がして不安です。
市原
市原
結論から申し上げると、3回塗りは「多めに塗って安心」という数ではありません。下塗り・中塗り・上塗りの3つの層が、それぞれ別の仕事をしているから3回です。1回減らしても塗り終わった直後は見分けがつきませんが、膜が薄いぶん、数年早く傷みやすくなります。役割と、施主さんが確かめられる方法をご説明しますね。
市原功一朗この相談に答えるのは:市原 功一朗(日進塗工 代表・一級建築塗装技能士・外壁診断士)
熊本で30年、戸建て塗装1,500件以上。押し売りしない無料診断がモットーです。

結論:3回には3つの役割がある。減らすと「塗り終わってから見えない差」が出る

下塗りは外壁と塗料をくっつける役、中塗りは膜の厚みをつくる役、上塗りは色をそろえて表面を守る役です。3回の内訳は、下塗りが1回と、仕上げ用の塗料が2回です。多くの製品では同じ塗料を2回重ね、その1回目を「中塗り」と呼ぶのが一般的です。
料理でいえば、下塗りは下ごしらえ、中塗りと上塗りはじっくり味を含ませる煮込みにあたります。下ごしらえを省いても、煮込みを早めに切り上げても、盛りつけた直後は見た目では分かりません。差が出てくるのは数年たってからです。
なお、木部や鉄部など素材によっては、下塗り材の種類や組み合わせが変わります。「3回」という数字だけで良し悪しを決めず、中身を確かめることが大切です。
3回塗りの役割。下塗りは外壁と塗料を密着させる、中塗りは塗膜の厚みをつくる、上塗りは色と保護の仕上げ(図解)

塗る回数・量・待ち時間は、塗料メーカーが決めている

何回塗るか、1回にどれだけ塗るか、次を塗るまで何時間あけるかは、塗装店の好みで決めるものではありません。塗料メーカーが製品ごとに定めています。
例として、関西ペイントのアクリルシリコン樹脂塗料「アレスダイナミックTOP」の定めを表にしました(出典:製品ページの標準塗装仕様、製品説明書)。
項目メーカーの定め(アレスダイナミックTOPの例)
工程適合する下塗り材 → 上塗り1回目 → 上塗り2回目
1回に塗る量(上塗り)1㎡あたり0.12〜0.14kg(1回ごと)
下塗りから上塗り1回目まで8時間以上、7日以内(気温23℃。下塗りにアレスダイナミックフィラーを使う場合)
上塗り1回目から2回目まで2時間以上、7日以内(気温23℃)
下塗りについて「シーラーレスではありません」と明記。シーラーレスは下塗りを省ける塗料のことで、この製品は適合する下塗り材が要る
塗装を避ける条件5℃以下
※数値はメーカーが示す標準で、下地の状態や気温によって変わります。製品が違えば数値も変わります。
この「1回に塗る量」から、使う缶の数の見当がつきます。1回の量を0.12〜0.14kgの真ん中の0.13kgとします。塗る面積が150㎡なら、上塗り2回で150×0.13×2=約39kg。15kg缶でおよそ3缶弱です(外壁の凹凸や吸い込みで増減します)。見積書の面積と、工事で使った缶の数を並べると、大きな食い違いがないかを確かめられます。

回数や時間を削られると、数年後に何が起きやすいか

削られ方塗り終わった直後数年後に出やすいこと
下塗りを省く・薄く塗る見た目では分からない塗膜のはがれ、ふくれ
中塗りを省く(2回塗り)ほぼ分からない膜が薄く、色あせやチョーキング(触ると手に白い粉)が早い
乾く前に次を塗る見た目では分からないふくれやムラ、本来の性能が出ない
回数は3回でも、メーカーの定める待ち時間を守らずに塗り重ねる「早すぎる3回塗り」は、中身としては手抜きと変わりません。回数と一緒に、塗った日と時刻も確かめる意味はここにあります。
待ち時間を守ると、雨の日が続いたときは工程が止まります。

見えなくなる工程を、施主が確かめる3つの方法

見えなくなる工程の確かめ方。工程ごとの写真、使った缶の数、乾かした時間(図解)
ポイント1

工程ごとの写真をもらう

下塗り・中塗り・上塗りのそれぞれで写真を撮ってもらいます。中塗りと上塗りの色をほんの少し変えて塗り、写真で層の違いが分かるようにする塗装店もあります(仕上がりの色は上塗りでそろいます)。
ポイント2

使った缶の数を聞く

見積書の面積と、メーカーの定める1回の量から、必要な缶数の見当がつきます。空き缶を並べた写真をお願いするのも一つの方法です。
ポイント3

塗った日と時刻の記録を見る

同じ面の工程が何日の何時に進んだかが分かれば、メーカーの定める間隔が守られたかを確かめられます。
中塗りと上塗りの色を変えるのは、塗り残しを見つけるための、国の仕様書にも載っている確かめ方です。国の公共建築の工事でも、各層の色を変えるなどして、中塗りと上塗りが全面にむらなく塗られているかを確認すると定められています(国の公共建築工事の標準仕様書(令和7年版)18.1.4)。
塗り回数が見積書にどう載っているべきかは見積書の比較ポイントの記事で、お仕事で留守がちなときの工事の見守り方は留守中の工事についての記事で紹介しています。

当社の実例:見えなくなる工程ほど、手をかけて記録に残す

お住まい・ご相談実際の進め方
熊本市北区・和風のお住まい(外壁の変色やツヤ引け、木部の傷み)傷みやすい木部は、下塗り(プライマー)のあと上塗りを2回。計3回塗りで保護
合志市・震災で補修した外壁の色ムラモルタル(セメントと砂を練って塗った壁)部分の塗り直しとひび割れ補修を済ませてから、防カビ・防藻の高耐候塗料で仕上げ
雨漏れ箇所や幕板(外壁の途中に横に渡した板)の傷み、壁のひび割れ幕板の交換やひび割れの処理を先に行い、屋根と外壁を塗装。細かな作業まで丁寧だった、というご感想をいただいています
当社は「見えない下地処理こそ丁寧に」を信条にしています。塗り重ねると隠れてしまう工程も写真に撮り、工事中はその日の作業を、写真を添えてLINEでご報告しています。

まとめ:3回塗りは「数」より「中身」を確かめる

市原
市原
要点を3つにまとめます。
①下塗り・中塗り・上塗りは、密着・厚み・仕上げと役割が別。
②回数、1回の量、乾かす時間はメーカーが決めていて、どれか一つ欠けても長持ちしにくい。
③工程ごとの写真、使った缶の数、塗った日時の3つを塗装店に頼めば、見えなくなる工程も確かめられる。
塗り終わると隠れてしまう部分だからこそ、報告を求めるのは施主さんの当然の権利です。遠慮はいりません。中身まで分かって任せた塗装なら、足場が外れた日の外壁を、晴れやかな気持ちで見上げられます。お手元の見積書の「3回塗り」、中身まで一緒に確かめてみませんか。
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この記事を書いた人

有限会社日進塗工 代表 市原功一朗

市原 功一朗(いちはら こういちろう)
有限会社日進塗工 代表|一級建築塗装技能士・外壁診断士

熊本市北区龍田を拠点に、地域の家々を塗り続けて30年。一級建築塗装技能士・外壁診断士として、熊本特有の暑さや雨風に合わせた戸建て塗装を累計1,500件以上手掛けてきました。「見えない下地処理こそ丁寧に」を信条に、押し売りのない無料診断を徹底。地元の視覚障がい者フットサル(ブラインドサッカー)のスポンサーなど、地域福祉への支援にも取り組んでいます。完工後も熊本の「住まいの主治医」として、年1回の無料点検で長くお付き合いしています。

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